第16章 動き出した真相
❁❁❁ 一織side ❁❁❁
微かな物音で、ふと目が覚める。
何気なく枕元に置いたスマホで時間を見て、まだ夜が 明け切らない時間になんだろうかと布団から体を起こせば、ひそひそと交わされる会話が聞こえて来る。
「ほら、ちゃんと目を開けて歩かないと危ないから」
『んー・・・でももう眠さの限界・・・』
この声・・・大神さんと、佐伯さん・・・ですね。
二階堂さんと兄さんから事務所での詳細を聞いて、それから後の事を思い出し、帰りが今になったのかと驚く。
万「やっぱり部屋まで送ろうか?」
『大丈夫・・・ちゃんと寝るから』
万「いや、それ以前の問題だ。もうフラフラして、コラコラ!ここで寝るなよ」
はぁ・・・仕方ありませんね。
2人の会話を聞いていられずにベッドから降り、上着を羽織って部屋か出れば、玄関先で朦朧とした佐伯さんを支える大神さんを見つける。
「こんな時間に騒いでいたら、他のメンバーが起き出してしまいますよ?」
万「アハハ・・・ごめん一織くん。作業が終わって愛聖を送って来たのはいいんだけど、見ての通りなんだよ。だから部屋まで連れて行こうかって言ってるんだけどさ」
『だから・・・大丈夫、って。万理だって昨日・・・ほとんど寝て・・・ない・・・』
眠さに勝てずふにゃふにゃとしながら言う佐伯さんの言葉に、そうなんですか?と大神さんに聞けば、返事の代わりに苦笑を見せた。
「今から帰って、またすぐに出勤と言うのも大変ですね」
万「あぁ、そこは社長から半休貰ったから少し寝てから午後出勤なんだよ。だからとりあえず、この今にも寝落ちそうな愛聖を部屋まで連行しないと・・・なんだけど」
乾いた笑いを零す大神さんを見て、いつもの佐伯さんに対する大神さんとは違う様子に、実は相当疲れているのではないかと考える。
「大神さん・・・不本意ではありますが、私が佐伯さんを部屋まで送り届けます」
万「一織くんが?」
「えぇ、そうです。ここでこのまま寝ぼけた佐伯さんをいつまでもそうして説得しているよりは名案でしょうからね」
万「でも・・・大丈夫?」
既に寝息を立て始めようとしている佐伯さんに1度視線を落とし、大神さんは私を見る。