第16章 動き出した真相
❁❁❁ 万理side ❁❁❁
『へぇ、そうなんだ?あんなに広々としてるのにリーズナブルだなんて凄いね。そっか、訳あり物件だったからなん・・・』
ほんの今まで軽快に話していた愛聖が、訳あり物件ってワードを口にした途端、急に黙り込む。
うん、怖がってる怖がってる。
訳あり物件って言っても、よくある話の心理的なんかじゃなくて、実際は建物が古くなったのをリノベーションしたから、新しく見えても実は築年数があるって意味の・・・訳あり物件なんだけどね。
そこを説明する前に、予想通り愛聖は黙り込んで何かを考えたり、そうかと思えばソワソワしたり。
愛聖は子供の頃から、オバケだの幽霊だのっていう、そういう類の物を怖がるのを知ってるから、ちょーっと驚かせようとイタズラを考えただけ。
『ば、万理・・・それってもしかして、だけどさ。その、どこのどなたかが人知れず人生のエンディングを迎えた場所・・・とかだったり、する?』
「え?あぁ、そういう言い方も場合によってはあるかもね」
ビクビクしながら話す愛聖にサラっと返せば、それはそれで愛聖はまた黙り込んだ。
しょうがないなぁ、愛聖は。
「ちなみに俺の家はそういう類のじゃないけどね」
『・・・え』
あまりに怖がるからちゃんと正解を話してやれば、愛聖は怒り出す。
『ホントに怖かったんだからね!!訳ありとか言うから私はてっきり・・・』
「てっきり、なに?」
『だ、だから!・・・もういい、作業する!』
膨れっ面を隠すことなくキーボードを打ち始める愛聖に込み上げてくる笑いを堪えながら、う~ん・・・とひとつ伸びをして、自分のデスクに戻る。
「さて、オバケが出る前に俺も残りを打ち込みしますかね」
『・・・っ、万理!!』
過剰に反応する愛聖に、ほらほら~手が止まってるよ?なんて笑いながら、愛聖が奏で出すキーボード音に、もうひとつの音を重ね始めた。