第16章 動き出した真相
って、さすがにそれはないかな。
だって、ここでの仕事が楽しいし、社長には返し切れない恩があるって言ってたし。
万「愛聖、そんなに見つめられると・・・俺に穴があくよ?」
それまで忙しなく手を動かしていた万理がピタリとその手を止めて、苦笑を浮かべながら私を見る。
えっ・・・?!
ずっと見てたのバレてたの?!
万「お腹でも空いた?それなら・・・えっと、確か・・・」
何を勘違いしてるのか万理は自分のジャケットのポケットに手を入れて何かを探り出す。
っていうか、なんで私がお腹空いてる設定?!
万「あったあった。はい、愛聖、口開けて?」
差し出される指先には、甘い香りが漂う1粒のチョコレート・・・
万「ほら、早くしないと溶けちゃうよ?」
『べ・・・別にお腹は空いてないからね!・・・チョコは、貰うけど』
万「・・・ツンデレ?」
『ち、違うから』
あからさまに笑う万理をそっちのけにして、その指からパクリとチョコを食べれば、口の中に広がる甘さに思わず顔中が緩む。
万「おいおい・・・勢いで俺の指まで食べるなって」
『甘くて美味しい・・・』
うっとりするような甘さに浸りながら言えば、万理もそれに続いてホントだね、と笑う。
ホントだねって、万理はいま食べてないよね?
そう思いながら万理を見れば・・・
『ゆ、指?!』
今まさにチョコを摘んでいた指先をペロリと舐めていた。
万「愛聖が早く食べなかったから溶けだしたチョコがついてたからさ?・・・ダメだった?」
『ダ・・・ダメっていうか、いや、ダメなんじゃない?!ね、社長?!』
小「ん~・・・僕的には、セーフかな?それより、若いっていいねぇ~」
『えぇっ?!』
一部始終を見ていた社長が、ニコニコしながらデスクを片付けている。
小「2人ともあと少しなんだよね?だったら帰る前に何か食べれるように僕が今から買い出ししてくるから、終わったら応接室で待ってて?」
万「買い出しなら俺が行きます」
万理が言うも社長は気にしないで~なんて言いながら車の鍵を指先でクルクルと回す。
小「あ、そうだ。万理くん、僕は信じてるからね?」
万「分かってますよ、社長?」
いつものように笑いながら言って、社長はドアから出て行ってしまう。