第16章 動き出した真相
静かな部屋の中で、タイピングの音だけがカタカタと存在を示す。
比較的なにも異常がなかった紡さんは、明日からのアイドリッシュセブンのスケジュールもあるからと言うことで社長が1度自宅まで送り届け、今この事務所に残っているのは、その社長と、万理と、私の3人だけ。
紡さんを送る時に社長が私も寮に送るって言ってくれたけど、手伝いをやりかけで帰るなんてしたくなかったし、そもそも私のスケジュールなんて・・・まだ、真っ白いしね。
全部が終わったら、これでもか!ってくらい寝れるから、大丈夫!・・・と、今は自分に言い聞かせておこう。
だって実の所、長時間パソコンと向き合ってるから目がシパシパして来てるから。
小「これでよし・・・と。僕の方は終わったよ。そっちはどう?」
う~ん・・・と伸びをしながら社長が私たちに作業の経過を確認する。
万「俺の方は・・・そうですね、あともうひと息って所です」
『すみません、私はもう少し掛かりそうです。事務員さんたちの勤怠管理表を打ち込んでいるので慎重になっちゃって・・・間違えたりしたら、大変だし』
小「それは大変だ。もし愛聖さんが間違った入力をしてしまっていたら、それはそっくりそのまま給料計算されちゃうからね?」
『わ、分かってます!うぅ・・・責任重大だなぁ・・・』
っていうか!
改めて勤怠管理を確認すると、万理・・・これって大丈夫なの?!
出勤も退勤も、ほぼ毎日同じような時間に打刻されてるし。
・・・いつも退勤時間よりも働いてる気がするんだけど?!
そもそも万理のお給料って、どれくらいなんだろう。
あ、いや、別に、人様の懐事情を探る訳じゃないけど、万理が住んでるマンションって、1LDKと言えどあの広さでしょ?
私が転がり込んでても不自由を感じない広さだったんだから。
お風呂とトイレも別だったし、なによりシステムキッチンだった。
それに、立地環境だってさほど悪くはない・・・となると。
それなりのお家賃って事になる、よね?
社長が経理を通さずに賃金を払ってる訳じゃないだろうし。
そもそもそんなの違法でしょうけど。
と、なると。
もしかして副業・・・してる、とか?
自分の思考そのままに、思わず万理の横顔をジーッと見つめてしまう。