第16章 動き出した真相
❁❁❁ 三月side ❁❁❁
時計の針がてっぺんを回っても、愛聖はまだ帰って来ない。
事情があって朝まで帰れるか分からないって連絡は、確かに大和さんにはあったけどよ。
なのに、もし帰って来た時に部屋中が真っ暗だったらと思うと、なかなか自分の部屋に戻れずにリビングのソファーに凭れる自分がいる。
大「なんだミツ、まだ起きてたのか?」
「大和さんこそ・・・こんな時間まで起きてるのはオレと変わんねぇじゃん」
開けっ放しのリビングのドアから覗く大和さんに言えば、少しだけ何かを考えてから冷蔵庫へ向かい、缶ビールを2本取り出して1本をオレの前に置いた。
大「愛聖なら万理さんも社長も、それからマネージャーも一緒だから心配いらないぞ?」
「別に、そういうんじゃないよ。ただ・・・もし帰って来た時に真っ暗だと怖いだろうなとか、腹、減ってたりしたら、とか・・・」
前にもテレビ局で真っ暗な所で襲われただとか、今回も事務所とはいえ夜だし、真っ暗な中で拘束されてたとか・・・普通に考えれば男のオレだってそんな目にあったら暫くは暗闇が怖いだろうと思うし。
それをぽつりぽつりと話せば、まぁな・・・と大和さんも言った。
「それに、あんな事があったのに事務所から帰れないだとか、いったい愛聖たちは何やってんだ?社長や万理さんがなにか仕事してるとしても、愛聖はさ・・・」
大「あぁ、それなら聞いてるよ。なんでも事務所掃除した後にみんなでパソコン復旧作業するとか?」
「復旧作業って、愛聖が事務作業してんのか?」
それこそ、事務員の仕事じゃないのか?
大「みたいだな。途中で万理さんと話もしたけど、愛聖・・・意外な特技持ってるらしいぞ?」
「特技?どんなだ?」
大「さぁ、そこまでは聞いてないけど」
そこまで聞いとけよ!気になるだろ!
大「とりあえず、これ飲んだらお互い寝ようぜ?」
「・・・だな」
あまり得意ではない缶ビールをひと口流し込み、大和さんを見て。
万理さんが一緒なら大丈夫だな・・・そう思いながらも、何となくもう少しだけ待っててみたい。
そう思う、自分がいた。