第16章 動き出した真相
社長が戻ってから日向さんに、今後一切こういう事はしないと約束させて、社長は帰るのに困るだろうとタクシーの手配までしてあげて・・・
『日向さん・・・いつかまた』
車に体を滑り込ませた日向さんに手を差し出せば、戸惑い、言葉に詰まりながらも私の手に自分の手を重ねた。
それからすぐに車は走り出し、やがて見えなくなった。
紡「これで良かったんでしょうか」
社長の顔を見て、紡さんが呟く。
小「誰かが見れば、ちゃんとした段階を踏むのが正しいと事だと言うかも知れない。けど、そうする事が必ずしも正しいとは言い切れないんだよ。奪われてしまったあの子たちの曲は戻っては来ないけど、自分たちで輝く物を持ってるから、きっと大丈夫」
紡「そうですね・・・私も、もっともっと皆さんの為に頑張ります」
万「社長、俺もです。まずは朝までに事務所の中を元通りにする所からですけど」
小「僕も手伝うから頑張ろう」
じゃあ私も!と名乗りを上げて、紡さんも4人で頑張れば朝までには片付けも終わりますね!と気合を入れる。
万「片付けが終わったら、俺はそれぞれのパソコンをチェックして、打ち込みのやり直しをしないとなぁ。経理の人のパソコンもそうだけど、他にも大変な事になってそうだし」
パソコンの打ち込み?
それなら私も手伝えるかも!
『ねぇ万理。打ち込みのやり直しって、書類を確認しながらひたすらタイピングって事だよね?』
万「まぁ、そういう事になるかな?朝までに終わるといいけど、ね」
『それ、私も手伝えるかもって言ったら、嬉しい?』
ね、どう?と聞き直せば、それを聞いていた紡さんも社長も、膨大な量の書類を思い浮かべたのか微妙な顔を見せた。
万「それはまぁ、嬉しいけど・・・結構大変かもよ?パソコン慣れしてないと」
『少しくらいなら役に立てると思うんだけど。実はね、私・・・タイピング1級なら持ってるんだよね』
子供の頃に、将来役に立つからって母さんに教えられて、八乙女社長に声を掛けられた頃に受けた検定試験が最後だけど。
小「1級って言ったら万理くんと変わらない位の実力があるんじゃ?」
万「俺はそういうの受けた事ないから、よく分かりませんけど。そうか・・・そう言えば愛聖のお母さんの仕事の中には、そういう仕事があったよな」