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〖 IDOLiSH7 〗 なないろパレット

第16章 動き出した真相


❁❁❁ 小鳥遊音晴side ❁❁❁

「忙しいところに時間を貰って悪いね」

そう言ってドアを閉めれば、八乙女の顔は普段より険しい物へと変わって行く。

こういう八乙女の表情なんて、僕は昔から見慣れているけど。

「早速だけど、事情はさっき電話で伝えた通りだよ。今回の事を大事にするつもりもない。ただ、ここへ来たのは・・・キミの顔を見て直接話したい事があったから」

チラリと僕を見るだけの八乙女に歩み寄り、その不機嫌な顔の正面に立った。

「八乙女。キミはその手腕でこの業界のトップに登り詰めた事は凄いと思う。会社自体も、僕の事務所とは比べ物にならないほどの大手プロダクションだ。僕とは違って、きっと辛く苦しい茨の道でもキミ自身が忙しい思いをしながら道を切り開いた成果だと僕は思ってる。ただ・・・その忙しさの中で、大事な事を忘れてない?」

八「・・・何が言いたい」

眉間に刻まれた溝を更に深くしながら、八乙女は僕を見据える。

「この仕事は、人を喜ばせる仕事だ。僕やキミは勿論、タレントやお客さん・・・それから仕事相手も含めてね。そういった人たちを大事にしないと、いつかとても大きな失敗をするよ」

今までだって、決して危なくなかった訳じゃないだろうと加えれば、何かを思案する為なのか八乙女は静かに目を閉じた。

八「何を言い出すかと思えば・・・バカバカしい。小鳥遊、人はコントロールするものだ。私はお前が言う全てをコントロールしてここまで来た。人を大事にしろ?・・・笑わせるな。自分の女房を早死させたヤツが言えたことか」

八乙女の冷めた言葉に、結の最期の姿が思い浮かんで心が震える。

「結は最期のその時まで精一杯に生きて・・・僕に宝物を残してくれたよ・・・かわいいひとり娘だ」

紡は、成長する毎に・・・その容姿まで結にそっくりになって来た。

結によく似てはいても、紡は紡だけれど。

八「・・・私なら結をもっと幸せにした!」

「違うよ、八乙女。幸せになるって言うのは、どちらか片方の想いだけでは成り立たない。結は結なりに、僕は僕なりに・・・お互いの幸せを想いあって生きてきた。八乙女、キミにもそれは分かるだろう?今は離れてしまったけれど、ちゃんと幸せを誓い合って結ばれた女性がいたはずだ。キミが立派に育てた息子さんだっているじゃないか」

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