• テキストサイズ

〖 IDOLiSH7 〗 なないろパレット

第16章 動き出した真相


愛聖さんが、ひとつひとつの言葉を選びながら話す姿に、八乙女社長の事を本当に大切に思っている事が伝わって来る。

そんな愛聖さんがまたひとつ瞬きをしながら音楽プロデューサーの前にそっと座れば、その人は俯いた顔をゆっくりと上げた。

『日向さん。私がここへ移籍すると発表した会見は知っていますよね?』

日「・・・あぁ」

『その日の控え室で八乙女社長が言ったんです。佐伯 愛聖、私はお前を厳しく教育して来た事を心に留め、今日からは小鳥遊の元で前を向いて歩け。例え大きな失敗をしても、あの男はちゃんとフォローが出来る人間だ・・・って。自分の元を離れる私にそう言って送り出してくれる人が、悪い人だとは思えません。きっと日向さんにも厳しい事をたくさん言って来たと思います。だけどそれは、出来ない事を無理やり言っていた訳じゃないと思います。だから・・・』



どんな苦難があっても、また自分の力で立ち上がって歩き出して下さい・・・



そう愛聖さんは言って立ち上がり、大神さんと何か言葉を交わして頷き、部屋から出て行った。

その後ろ姿を見送った後に何気なく日向さんと呼ばれる人を見れば、目を赤くして瞬きを繰り返していた。

「大神さん、愛聖さんはどちらへ?」

手洗いにとかなら、大神さんに言うよりも私にだと思ったから聞けば、救急箱を取りに行ったんだと、予想もしなかった答えが返って来る。

「どこかケガをしていたんでしょうか・・・」

万「いや、そうじゃなくて・・・まったく、お人好しと言うかなんというか」

僅かな苦笑を見せながら視線だけで、ほら・・・と示された方を見れば、日向さんの頬に微かな傷が見えた。

万「放っておいても問題はなさそうなんだけど、愛聖は多分自分のせいだからって、ね」

「そう、ですか・・・でも、愛聖さん自身のお怪我じゃなくて少し安心しました」

そう言って息を吐けば、大神さんはあいつもケガばっかりしてるから救急箱なんて言われたら心配しちゃうよね?と目を細める。

その表情の柔らかさに、本当に仲が良いんだなと思いながら、私も小さく笑い返して、愛聖さんが出て行ったドアへと、また視線を戻した。
/ 1348ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp