第16章 動き出した真相
額に滲む汗を手の甲で拭いながら二階堂さんが笑えば、四葉さんが私を二階堂さんから遠ざける。
環「ダメ。マリーは俺が守る係だから。ヤマさんはそいつが逃げないように見張る係」
大「えー・・・お兄さんもタマみたいに愛聖をギューってしたいんだけど?」
『えぇっ?!』
環「ほら、マリーがヤマさんじゃイヤだって」
『ち、違います!別に二階堂さんが嫌とかじゃなくて』
大「違うって、どっちが?あ、そうか。オレじゃないってなら、タマの方か?」
『だから!』
既に二階堂さんは分かっているのに、わざと楽しげに煽り出す。
この二階堂さんの感じは、どう言っても私が窮地に追いやられるだけだと思って、それ以上は何も言わずに小さく息を吐く。
だっていつも、こうやってやりくるめられてるし。
『四葉さん。そこまでしてくれなくても、もう大丈夫だと思いますよ?』
いつまでもギュッと私を抱きしめている四葉さんの手に自分の手を重ねて、ね?と顔を仰ぎ見る。
環「分かった。けど、バンちゃんたちが来るまで俺からぜってぇ離れんなよ?」
納得はしつつも口を尖らせる四葉さんに笑い返してありがとうを伝えると、漸くその腕は解かれる。
大「よっし!じゃあ次はお兄さんが守ってあげようかな?」
『・・・それは遠慮させて頂きます』
両手を広げてスタンバイする二階堂さんから大袈裟なくらいに離れ、逢坂さんと三月さんによって縛られた日向さんの様子を見る為に側に行く。
三「おい・・・そんなに近寄ったら危ねぇんじゃないのか?」
心配そうに私を見る三月さんに、きっともう大丈夫だからと言って、一応の距離を保って足を止める。
観念しきった日向さんを見つめ、どうしてこんな事を・・・と聞こうとして、開きかけた口を閉じる。
それは、社長たちが来たら真実が明かされるだろうと思ったのと、もし、前回の騒ぎも日向さんだったらと思えば、当事者メンバーがいるこの場で私が聞くべき事じゃないと判断したから。
そんな私たちが立ち尽くす中で、事務所の時計の音だけが小さく響いていた。