第16章 動き出した真相
耳だけに神経を集中させて、もう・・・どれくらいの時間が過ぎたんだろう。
ガサガサと探し物をしている合間に聞こえるため息と、引き出しを開けたり閉めたりする音以外はこれといって聞こえては来ない。
何を探しているのかは分からないけど、それ以外の事はなにもなく時間が過ぎていく。
私をここまで拘束してる割には何もして来ない。
・・・されても怖いんだけど。
だけど、少しだけ分かった事もある。
あの人・・・私を追いかけて捕まえた時、データが見つかったら自由にしてやるって言ってた。
データって、なんのだろう。
前に泥棒に入られてからは、少しでも大事なものは社長室の金庫に入れる決まりになってるから、ここには置いてないはず。
「・・・ここにもない。前はこの机の中にあったってのに、どこにあるんだよ」
またも大きなため息を吐きながら呟かれる言葉に、思わず息を飲む。
・・・前はこの机の中にあった?
前は・・・って・・・前にもここに忍び込んだことがあるって発言にも取れるけど?!
じゃあ・・・もしかしてこの人は、前に入った泥棒と同一犯ってこと?!
だとしたら、今も盗み出そうとしてるのは・・・アイドリッシュセブンの曲のデータディスク?!
もしそうだとしても、それは機密事項同然だから社長室の金庫の中だ。
でも、もしもそれに気が付かれてしまったら?
もちろん私は鍵の在処や番号なんて知らないし。
知っていたとしても、答える必要はない。
そうなると、必然的に・・・何か危害を加えてでも聞き出そうとするか、私を引き換えに出して社長を脅すか・・・?
そこまで考えて、全身の体温が急激に下がるのを感じる。
何としても、それだけは避けたい。
けど、どうしたらいいんだろう。
手や足どころか、目隠しにガムテープで口まで貼られた状態では自力で逃げ出すどころか誰かに助けを求める事さえ出来ない。
せめて目隠しさえなければこっそり誰かにラビチャを打てるのに。
それでもどうにか誰かに電話くらいと思って体を捩りながら服を探ると、ポケットにあったはずのスマホがない。
もしかして服から抜け落ちたとか?
そう考えて手や足を動かしてみても、それらしき物は見つからない。
どこかで落とし・・・あの時!
あの人に遭遇して逃げようとして、でも捕まってしまって・・・