第16章 動き出した真相
会社の車の鍵を置きに来て、今度はスマホを忘れて帰るとか・・・マリーどんだけあわてんぼうなんだ?とそーちゃんに小声で言えば、そーちゃんはなんか難しい顔をしながら考え込む。
壮「環くん、もしかしたら愛聖さんはまだ中にいるのかも知れない」
「マジで?じゃ早く入ろうぜ?」
壮「待って、あくまでもそれは仮定だよ。何か事情があって電話に出れないとか、もしくは・・・」
そこまで言って黙り込むそーちゃんに、もしくはの続きを言えよと目で訴えると、これも仮定だけれどとそーちゃんが続ける。
壮「ここにいる時に気分が悪くなって休んでるとか・・・」
「それなら早く行ってやんなきゃだろ?」
壮「そうだね。一応、大和さんには連絡を入れよう」
そーちゃんはヤマさんに電話を掛けて事情を説明して何かを頼むと、通話を切った。
壮「大和さんと三月さんが今からすぐ来てくれるって。だから、中には僕ひとりで入って様子を見てくるから、環くんはここで2人を待ってて」
「ムリ・・・俺もそーちゃんと一緒に中に入る。もしなんかあったらそーちゃん1人より俺もいた方が安全だし」
壮「ダメだよ環くん」
「ぜってームリ。ぜってー入る・・・だから、ムリ」
言い切ってドアノブを握り締める俺を見て、そーちゃんが大きくため息を吐く。
壮「分かった。でも1つだけ約束して?僕が先に入る」
「分かった。約束する」
そーちゃんに返事をして、ゆっくりとノブを回してドアを開けると、隙間からそーちゃんが真剣な顔をして中を覗いた。
壮「あっ・・・あれってもしかして」
中の様子を見たそーちゃんの呟きに俺も後ろから中を見ると、いつもバンちゃんがいる部屋に続く廊下の途中で小さな光が点滅してるのが見えた。
「マリーのスマホだな。じゃあやっぱりこの中にマリーがいるって事か?」
壮「そうだといいんだけど・・・今のところ人の姿は見当たらないね。環くん、静かに中に入ろう」
音を立てないようにドアを開けて、2人で体を滑り込ませてドアを閉める。
光の点滅まで歩いて行くと、そーちゃんがそれを拾い上げた。
「そーちゃん、それ・・・」
薄暗闇の中で揺れるストラップは、沖縄で俺がいおりんに見て貰ったやつだと分かる。
それはやっぱりマリーのスマホだった。