第16章 動き出した真相
大「愛聖と遭遇したら、とりあえず連絡くれよ」
「そうですね。あ、でも・・・もしすぐそこで会ったら1度ここに戻った方がいいと思うから、その時は僕たちが戻って大和さんに愛聖さんを引き渡してからまた出掛けることにするよ」
玄関先まで見送りに来てくれた大和さんに言ってから、環くんを促し歩き出す。
すぐそこで会ったら、とは言ったものの。
暫く直線だと言うのに愛聖さんの姿が見えてくる感じもない。
ただ車の鍵を返しに行くだけだからとは言っていたけど、それでもやっぱり誰かが同行した方が良かったんじゃないかと今更ながら思う。
もちろん高校生である一織くんや環くん、それから未成年者の陸くんやナギくんではなく。
僕や大和さんか三月さんなら成人してるし、多少まごついて時間が遅くなっても咎められる事はないだろうから。
それにしても、寮から事務所まで半分来たと言うのに、それでもまだ愛聖さんと会わないのはどうしてだろう。
環「なぁ、そーちゃん」
「環くん、なに?」
環「この道をまっすぐ行って、あの角を曲がって少し行ったら事務所だよな?」
通い慣れたはずの道のりを敢えて僕に確認する環くんに首を傾げながら、道は間違ってないよと返す。
環「だよな?なんでここまで来てもマリーと会わないんだろって思ったから」
「僕もいま、環くんと同じ事を考えてたよ」
環「そーちゃんも?もしかしたらバンちゃんとか帰って来てて、話とかしてるのかも?とかも思った」
「そうだね。でもそれなら愛聖さんも連絡くれると思うんだけど」
そんな会話をしている内に、とうとう事務所の前に着いてしまう。
環「電気、消えてる。やっぱマリーいないっぽいよな?寄り道でもしてんのかな?」
「そしたら事務所の鍵は閉まってるって事だから、僕たちも中には入れないよ」
環「あ、そうか!鍵閉まってたら入れねぇじゃん!ん」
そう言いながら環くんが事務所のドアに手を掛けると、それはなんの抵抗もなくノブが回って扉が開いていく。
環「マリーが閉め忘れたのか?とりあえず中に入れるからラッキーだな。中に入ろうぜ」
中に入ろうとする環くんを見て、鍵が開いてるなら帰りはどうしたらいいんだろうと思い、僕は環くんを呼び止めた。