第15章 shine of the palm
『すみません、TRIGGERがドタキャンってどういう事ですか?確かリハの時までは普通にしてましたよね?』
「そうなんですけど・・・TRIGGERの事務所の社長とウチの上の物が揉めたとかで、急なキャンセルを食らってしまって・・・」
八乙女社長ならやりかねない・・・と、そんな考えが即座に浮かぶ。
「それで、TRIGGERは最後に出演なので代わりにもう一度歌って頂ける方を探してまして・・・あの・・・」
紡「うちのアイドリッシュセブンに・・・と言うお話でしょうか?・・・だったら、お断りします」
「そんな・・・」
スタッフさんの気持ちも、分かる。
けど、それを聞いた紡さんの気持ちも・・・分かるよ。
会場にいたお客さんの半数以上はTRIGGERのファンだったし、そこにTRIGGERの代わりにと出ればブーイングを浴び続けながら歌う事にもなる。
生放送番組で2度の出演は大きなメリットではあるけれど、そんなアウェイな場所で歌うのはデメリットでもあって・・・
「他の出演者にも全て断られてしまって・・・」
紡「大変な事態だと言うことは分かります。ですが、大半がTRIGGERのファンである場所でアイドリッシュセブンを出演させるには、こちらとしても・・・」
陸「出るよ、オレたち」
紡さんも困りながらも応対していると、一部始終を見ていた七瀬さんが1歩前に出た。
紡「陸さん?!」
陸「だって、困った時はお互い様でしょ?お客さんの落胆はミューフェスでも経験してるし、大丈夫だよ。ね、一織」
一「どうしてそこで私に振るんですか」
紡「あの時とは比べ物にならない位ですよ?!TRIGGERを待つお客さんの期待を裏切る様な出演なんです。アイドリッシュセブンがTRIGGERの代わりにとなれば、ブーイングだって・・・」
それは確かに紡さんの言う通りかもしれない。
あのRe:valeだって、いなくなった万理の代わりに入った百ちゃんの初ステージでは、多少なりともブーイングはあった。
万理を待ち侘びていた女の子たちの、百ちゃんへの・・・
でもその時は、千がちゃんと百ちゃんをフォローして新生Re:valeを立ち上げたんだよね。
陸「心配しなくても大丈夫だよ。マネージャーのおかげで、オレたち丈夫に育ってるもん」
紡「陸さん・・・でも、」
陸「大丈夫だから」