第15章 shine of the palm
まだなにか言いたそうにしているのを他所にスマホを手に取り、電話をかける。
「・・・俺だ。あんたにサウンドシップの事で話がある」
八 ー まだそんな所にいたのか?姉鷺は何をしている。さっさと荷物をまとめてそこを出ろ ー
「俺たちは出演するからな!アンタの事情なんて知ったことか!」
淡々と話す相手に負けじと、勢い付いたままで言って退ける。
八 ー 今回の事はそっちの人間が悪い。向こうが頭を下げない限り、TRIGGERの出演はない ー
「だから!そんな事は俺たちに関係ない!俺たちを見る為にここへ来てる客の事も考えろよ!」
八 ー 知らぬ事だ・・・局側の失態だ、金銭的な保証ならば、向こうがするだろう ー
金の問題じゃねぇんだよ!
「俺たちは歌いたいんだ!今夜の客の前で・・・俺たちを待つファンの前でだ!」
八 ー 楽、お前がどう言おうと考えは変わらない。勝手なマネをしたら、お前たちを辞めさせる事も出来る。再起不能なまでに叩き潰して、2度とこの世界に戻れなくする。そうなれば、お前の母親も・・・さぞかし残念がるだろうな ー
親父とお袋が・・・どういう約束をしているかは聞かされていない。
ただひとつ知ってるのは、2人が別れた後・・・1度も俺はお袋の顔を見ていないって事だ。
八 ー 楽。お前たちが歌えるのは、昨日今日集まった客の力じゃない・・・俺の力だ。 それを履き違えるな ー
「違っ・・・クソッ・・・切れた・・・」
一方的に途切れた通話に、どこにもやれない苛立ちが募る。
姉「気が済んだ?だったら・・・」
「うるさい!まだなにも終わってねぇよ!・・・俺たちは待つって言ったんだ。だから最後まで、帰ったりしない」
姉「そう・・・じゃあ好きにしなさい。その代わり、社長に怒られる時はアンタたちも一緒よ」
呆れながら零される言葉に耳を貸すこともなく、ただ黙って・・・ソファーへと腰を沈めた。