第15章 shine of the palm
三「汚れるだとか、そんなの気にすんな?どうせ洗濯するんだし、なんともねぇぞ?」
『そういう訳には・・・』
三「それにここはテレビ局だし、スッピンでウロウロする方がやばいんじゃねぇのか?女優だろ?」
うぅ・・・そう言われると、仕事前にはノーメイクでいることもあるとは言え心配にもなって来る。
『じゃあ、ちょっとだけ。寮からコンビニ行く位の軽いメイクだけでもすることにします』
カバンからポーチを出して、簡単にメイクを施していく。
大「意外な早さだな・・・さすがカメレオン女優」
『どういう意味ですか!』
鏡越しに二階堂さんが言って、それに私も笑いながら返す。
『あとは・・・う~ん』
残すところはルージュだけなのに、持ち合わせているカラーだと、どれも今の服装にはピンと来ないような・・・?
3つのルージュを見比べながら悩んでいると、横から逢坂さんが同じようにルージュを覗く。
壮「単色カラーで物足りないなら、色を合わせてみるのはどうかな?」
私の前に椅子を移動させた逢坂さんが、3本のルージュを私の唇に当てては離しを繰り返し、やがて小さく微笑んだ。
壮「これとこれを少し混ぜて・・・もう少しこう、かな・・・?よし、これならどう?」
リップパレットの上で作り出されたカラーをブラシで絡め取り、さっきと同じように私の唇に当てる。
作られたカラーは、淡く赤みがかってはいるものの派手さはなく、普段でも使えそうな色味を帯びていた。
『逢坂さんて、凄い・・・メイクさんみたいですね』
壮「それならこのまま、メイクさんみたいに僕がカラーを乗せてあげるよ。ちょっと、動かないで?」
さすがにそれは・・・と言おうとしても、逢坂さんがニコニコとしているものだから、敢えて抵抗することもなくお願いする。
スルスルと唇の上を撫でるブラシの感触が擽ったくてピクリと反応してしまうと、逢坂さんは指先でそっとズレたルージュを拭って微笑んだ。
壮「はい、出来たよ」
『ありがとうございます、逢坂さん』
大「つーか、無防備に顔寄せあっちゃって・・・や~らし~」
『に、二階堂さん!怒りますよ?!』
ニヤリとしながら言う二階堂さんにひと声叫びながらも、近い距離感にある逢坂さんの顔に今更ながら慌てる私もいる。
大「そんな中学生みたいな格好で怒られても平気だけどな」