第4章 卒業
号令係の音頭の声で、兵士達は今まで苦楽を共にしてきた仲間達と祝杯をあげた。
周囲にいる兵士達と笑顔で乾杯をしていたに、同期の中でも親しくしていた女性兵士が声をかけてくる。
「ねぇねぇ、ところで皆はこれからどうするの?所属兵団はもう決めた?」
そう言って彼女は、を見る。
「はもちろん、憲兵団に行くんだよね?」
その顔を見れば、彼女が何の疑問も無くそう思っているのだということが分かった。
何しろは、先ほどの卒団式で行われた成績優秀者の発表で、首席であったからだ。
だがは、ふるふると首を横に振った。
「私は…調査兵団に行くよ」
「え…っ」
周りの仲間達の表情が瞬時に凍りつき、皆が一瞬言葉を失った。
だが、一番最初に気を持ち直したのは、言いだしっぺである女性兵士だ。
「そう…なんだ。でも何で?首席なんだから、憲兵団でも駐屯兵団でも…いくらでも選べるのに…」
少し困惑したような、不安げな表情で見てくる彼女に、は努めて明るい声で返事をする。
「うん…、でも一回生の頃から、もう決めてたんだ!」
そう言ってがニコリと笑うと、周囲の仲間達もつられて笑った。
は仲間内では、話題の中心にいるようなタイプではない。だが、その存在は場の雰囲気を和ませる。の表情一つで場の空気が変わり、静かなムードメーカー的な存在なのである。