第4章 卒業
「先輩、それを聞くためにわざわざ来て下さったんですか…?」
しばらく二人で空を見上げてぼんやりとしていたが、ついに好奇心に負けて、おずおずとが切り出した。
「…まぁ、そんなところだ」
めずらしく歯切れの悪い口調に、が小首を傾げる。
そんなの仕草を見て、(やっぱりまだガキくせぇ)とリヴァイは内心笑った。
「実は、お前を勧誘しに来た。…憲兵団や駐屯兵団に入りたいと言われれば、多少はねばったかもしれない」
正直に言う。は今、天に昇るほど嬉しかった。
あのリヴァイが、自分の力を必要としてくれている。自分が頑張ってきたことは、今、報われた…と思わず思ってしまうほどに。
「お前は優秀だ。俺は…お前の力は調査兵団で活かすべきだと思った」
そう言ってから、リヴァイは一呼吸おいた。
「だが…最も死に近い場所へお前を勧誘することを、躊躇しなかった訳じゃない」
そう言って、リヴァイは膝に視線を落とす。
その膝に、ふと、影が差した。
見れば、が立ち上がって敬礼していた。
「私は…ずっと、ずっと前から、調査兵団に入ると決めていました。リヴァイ先輩、私、一生懸命頑張ります。だから…、これからも、よろしくお願いしますっ!!」
深夜の静寂の中には場違いな、弾むように明るい声を張り上げたに、
「…くっ、くくく」
リヴァイは手で自身の顔を覆って、小さく笑った。
「いい覚悟だ。待っているからな」
リヴァイは立ち上がり、すれ違いざまにの肩を軽く叩いていった。
去っていくリヴァイの背中を見送りながら、はまだ敬礼を解かずにいた。
(絶対に、先輩のお役に立てるよう、そのご期待に添えるよう…頑張ります!!)
の胸には、新たな道への熱意が燃えていた。