第3章 合同演習
リヴァイは後ろを飛んでいたの姿が急に消えた事に気が付き、後ろをふり向いた。
まさにその瞬間、は馬糞の肥だめに落下していた。
「…あいつ…何してんだ……」
リヴァイは一瞬あっけに取られたものの、慌てての元へと降り立った。
「おいっ、大丈夫かっ、怪我はねぇか!!?」
声をかけるも、はあまりのショックで茫然としていて反応がない。
「ちっ」
リヴァイは小さく舌打ちをすると、ズボッと馬糞の中に腕を突っ込んで、の身体を引っ張り上げた。
そこで、やっとが思考を取り戻す。
「あっ…リヴァイ…せんぱい…っ」
じわっと、コバルトブルーの大きな瞳に涙が盛り上がってくるのを見て、リヴァイは慌てた。
正直自分は、相手が男だろうが女だろうが、泣こうが喚こうが、一切気にしないタチである。
だがどうしてだろう。の涙を見た瞬間、胸を締め付けられるような気持ちになった。
一刻も早くこの涙を止めてやらなければという焦燥感にかられた。
「泣くな、まずはここから出ろっ」
べちゃっ、と、ようやく肥だめの中からの全身を引きずり出すことができたリヴァイは、座り込んでいる彼女の傍らに膝をついた。
彼女を抱き上げたせいで、自身も全身糞まみれだ。潔癖症のリヴァイにとって、今すく絶叫してもいいような状況である。だが、リヴァイは構わずにの腕、足を触り、怪我がないかを確認し始めた。
「怪我してねぇか?どこか痛ぇところはないか?」
「う…うぅっ…、だ、だいじょうぶです…っ…」
どうやら怪我はないようだった。ほっとリヴァイが息をついたとき、の我慢が限界に達した。
「す…、すっすびばぜん…、さっ、最後のさいごで…こ、こんなっ…う、…うぇ~…」
が声をあげて泣き始めた。
は小柄であるうえに、童顔である。そんなが声をあげて泣くと、ますます幼い子どものように見えた。
リヴァイは一瞬、馬糞まみれであるにも関わらず、
(なんだコイツは……クッソ可愛い…)
と思ってしまった。だが、慌てて自分を律した。