第3章 合同演習
だが、が心配していたような事は一切起こらなかった。リヴァイは的確に指示を出し、班員は誰ひとり怪我をすることもなく、スムーズにノルマをこなしていくことができた。
確かにリヴァイは愛想がいい訳ではない。それに、口調も乱暴だし粗暴だ。だが誰よりも細かく仲間に気を配り、フォローし、率いていってくれる。そして間近で見るリヴァイの技術は、やはり群を抜いて素晴らしかった。は、訓練中という事も忘れて、何度見とれそうになったか分からない。
合同演習を通じて知った実際のリヴァイは、がもともと抱いていたリヴァイ像とは異なる面をいくつも持っていた。
(リヴァイ先輩のこと…誤解していたのかも)
班に課せられたノルマは、リヴァイの的確な指示と、班員の能力の高さであっという間にクリアした。
「よし、リヴァイ班は合格!!帰ってよし!!」
採点をしていた教官に許可され、班員は来た時よりややゆったりとした速度で森の出口を目指した。
無事に訓練を終了する事ができ、は肩の力がやっとぬけたような気がした。
前をゆくリヴァイの背中を見ながら、今日の訓練ではヘマをしなくて本当に良かった…とほっと息をついていた瞬間、アンカーを指した木の枝がボロリと崩れた。その部分だけ腐っていたのだ。
「えっ…!!?」
気が緩んでいた事もありは反応する間もなく、まっさかさまに落下した。
べちゃっ
「…うぅっ…!!?」
幸いにも、落下の痛みはなかった。だが、妙に柔らかいところに落下した。瞬時に、鼻がもげるような悪臭を感じる。
「え……っ…こ、ここは…っ!!!」
なんと、は肥だめのど真ん中に落下したのだ。兵団で飼育している馬達の、馬糞だ。
幸い足からまっすぐに落下したので、顔は無事である。だが肩から下は、どっぷりと馬糞に埋まっていた。
「………」
の思考はそこで停止した。