第7章 勝てない相手
すぐ近くで試合を見ていたは、リヴァイが勝つのを嬉しく思いつつも医務室に運ばれていった兵士たちのことが心配だった。だから思わず口が動いた。
「リヴァイさん!相手の人に怪我させてはダメですよ!」
視線だけで人を殺せそうな迫力をギラギラと放っていたリヴァイだったが、の声にピクリと反応すると右手を小さく上げた。まるで「分かったよ」と言うかのように。
そしてそれを境に、リヴァイから垂れ流されていたピリピリした殺気はピタリと止んだのだった。
「いやぁ、さすがだねぇ」
横に立っていたハンジが心底感心したような声を上げたが、にはそれが何のことを言っているのか分からないのだった。
そしてついに試合は決勝戦を迎え、対戦相手はリヴァイに次ぐ兵団第二位の実力者であるミケだった。さすがに今までの対戦相手とは段違いの強者であったが、それでもリヴァイの敵ではなかった。
に注意されたことを忠実に守り、医務室送りにしない程度の力であっという間にミケを負かしたリヴァイは、これでやっとのもとへと戻れると思って先程まで彼女が立っていた方向へと目を向けた。
だが、そこにの姿はなかった。
どこに行ったのだろうと辺りを見回していると、エルヴィンが歩み寄ってきた。優勝賞品のことでも言いに来たのかと思ったが、今はそれよりもだ。どこに行ったのだろう?
そんな心ここにあらず状態のリヴァイに対して、エルヴィンが放った言葉はとんでもないものだった。
「勝ち残ったリヴァイには、最後にと勝負してもらうっ!」
「なっ…」
一瞬リヴァイは言葉を失った。
周囲の兵士たちからは面白がるような歓声が一斉に上がったが、リヴァイが無言でジロリと一瞥するとあっという間に騒ぎは収まった。ハンジだけはそれすらも面白がって腹を抱えて笑っていた。