第7章 勝てない相手
「さぁーお次は、いよいよこの方の登場です!人類最強の兵士、リヴァイ兵士長―!」
アルミンの手際の良い進行により次々と試合は進んでいき、ついにリヴァイの順番がやってきた。相手は、104期で一番の怪力であるライナーだ。
「兵長と勝負ができるなんて光栄です。どうぞお手柔らかに」
勝負台の前でペコリと軽く頭を下げたライナーに、リヴァイはフンと鼻を鳴らす。
「本気でやってやる、ってツラしてるがな」
リヴァイはチラリとの方を見た。ちゃっかり隣に立っているハンジは気に食わないが、目が合うとはヒラヒラと小さな手を振ってくれた。パクパクと動く唇の動きから「がんばって」と言われたのが分かって、ドキュンとリヴァイの胸を貫く。
「レディー、ファイッ!」
ダーンッ
アルミンの開始の合図と同時に、ライナーの巨体が宙を一回転して地面に叩きつけられた。静まり返る兵士たち。今の一瞬で、一体何が起こった?
「…しょ、勝者はリヴァイ兵長―っ!対するライナーは、信じられないことに、腕を倒された勢いで身体まで吹き飛ばされてしまったようだー!!」
いち早く我に帰ったアルミンの的確な解説により、ようやく周囲の兵士たちにも今の状況が理解できたのだった。
それにしても何という力であろう。あの体格の良いライナーを瞬殺、おまけに身体ごと吹き飛ばすとは。彼だって決して弱くはない。むしろこんな初戦でリヴァイと当たりさえしなければ、十分決勝戦まで残れるだけの実力があったはずだ。
白目をむいているライナーは、担架で医務室へと運ばれていった。
だが、リヴァイにはすでにそんなものは見えていない。先ほどのの応援によりスイッチの入った彼の目は完全に戦闘モードへと変わっており、その後も対戦相手を次々と医務室送りにしていったのだった。
今の彼からは凄まじい気迫が溢れ出しており、下手なことを言えば文字通り瞬殺されてしまいそうな雰囲気すらある。だから、司会進行のアルミンですら迂闊に声をかけることができない。
だがそれもこれも、実は「早くと部屋に帰りたい」という単純な思いからきているのだった。リヴァイはその表情から読み取ることは難しいが、のことが好きで好きでたまらず、出来ることならほんの少しですら離れたくないのだ。