第7章 勝てない相手
今もまだバカ騒ぎを続けている輪の中から二人は抜け出すと、手をつないで衣類修繕室へと帰っていった。
その途中で、ふとリヴァイはあることを思い出す。
「そう言えば優勝賞品のこと、エルヴィンになんと言われたんだ?」
「私が勝ったら、リヴァイさんが欲しがっていた掃除用具を買ってくれると。だから私、頑張ったんですよ」
ニコニコと本当に嬉しそうに笑顔を浮かべるを見て、リヴァイは胸の奥から熱いものがこみ上げてくるのを感じた。もうこれ以上は我慢の限界だ。沸き上がってくるこの気持ちを抑えることができない。
衣類修繕室の扉を性急に扉を開いてを先に中に入れると、リヴァイは後ろから彼女の細い身体を抱きしめた。そのまま、もたれかかるようにして背中で扉を閉める。
「まいった…お前には本当に敵わないな」
肩に顔をうずめるようにして言われた言葉に、何のことだろうと不思議に思いつつも、幸せな気持ちではリヴァイの頭に頬ずりをしたのだった。
〇
それから数日後、リヴァイのもとに大量の掃除用具が届いたのだった。丁度部屋を訪れていたハンジがそれを見て声を上げる。
「うっは~!奮発したねぇ、エルヴィン」
「当然だ。が勝ったんだからな」
届いた品々を見ながら笑みを浮かべたリヴァイに、珍しいこともあるものだとハンジは目をパチクリさせる。そして、試合の時の様子を思い出してニヤニヤと笑った。
「リヴァイでも勝てない相手がいるんだね」
「当然だ。には絶対勝てねぇ」
そう言ってリヴァイは満足気に鼻を鳴らしたのだった。