第7章 勝てない相手
「さて!ついに始まりました!第一回調査兵団腕相撲大会―っ!司会進行はアルミン・アルレルトが務めさせていただきます!」
早々に戦線離脱したアルミンが声を張り上げる。体格的に劣る自分では純粋な力勝負では勝てないことを悟り、早々に自分の役割を見つけたのだろう。
「勝負はトーナメント形式!一度でも負けたら即終了です!では第一試合は、事の発端であるエレン・イェーガー対ジャン・キルシュタインです!」
周囲を大勢の兵士たちが取り囲む中、勝負台の前に二人は出てくると、ガッシと手を握り合った。
にらみ合う二人の間には、バチバチと火花が散っているように見えるほどで、試合開始前から一触即発の状態だ。
「では…レディー、ファイッ!」
「「ふんんん!!!」」
アルミンの合図と共に、二人は腕に力を込めた。周囲を取り囲んでいる兵士たちから一斉に声援が上がり、大変な盛り上がり様だ。
「んんんん!!」
兵士の強さは、単純に一つの指標だけでは測れない。それぞれの能力のバランスが重要だからだ。だが、腕相撲のように単純な競技では、やはり最終的に力の強さがモノを言う。
「ぐはっ!」
ジャンが苦しそうな声を上げて、勝負台の脇にがっくりと膝をついた。
勝負に勝ったのはエレンだった。対人格闘術でジャンよりも成績の良かった彼が勝つのは当然のことかもしれない。
勝利したエレンのもとにはミカサが駆け寄り、負けたジャンの方にはコニーとサシャが声をかけに行った。
エレンにしか見せない柔らかな表情を浮かべているミカサをチラリと見て、ジャンはしょんぼりと肩を落として兵士たちの中に消えていったのだった。哀れである。