第7章 勝てない相手
「お前が出てくれれば兵士たちの訓練になる。参加しろリヴァイ」
「あ?それは命令か?」
「団長命令だ」
エルヴィンの声には有無を言わさぬ迫力があり、リヴァイは一瞬、業務上の命令を受けたのかと錯覚してしまう。だが冷静に考えれば何のことはない。ただの遊びの誘いだ。
「…了解だ」
とは言え、こうなってしまったエルヴィンは、もうどうにもならないことは分かっている。真面目そうに見えて、実は結構悪ふざけが好きな男だということは、長年の付き合いで十分理解しているからだ。
そして、遊びだろうが仕事だろうが、やると決めたらとことんまで突き詰めてやるということも。エルヴィンは超がつくほどの完璧主義者なのだ。
リヴァイは観念して、腕相撲大会に参加することにした。
一方のはと言えば、いきなりハンジに抱きかかえて連れてこられたせいで、正直言ってまだ目を白黒させていた。だが、つないでいた手を名残惜しそうに離して「行ってくる」とリヴァイが言ったので、
「頑張ってくださいね」
と笑顔で送り出したのだった。
その笑顔を見て、リヴァイは内心平静ではいられないほど気持ちが昂ぶったのだったが、皆の手前抱きしめる訳にもいかず、ぐっと我慢した。
それに恥ずかしがり屋のは、人前でそんなことをしたらまた先ほどのように腕の中から逃げていってしまうだろう。
リヴァイは俄然やる気が出てきた。さっさと終わらせて、と部屋に戻ろう。そして思う存分を抱きしめるのだ。