第7章 勝てない相手
定位置である来客用のソファに腰掛けてリヴァイが紅茶をすすっていると、窓の外から何やら騒ぐ声が聞こえてくる。
「何の騒ぎだ?」
リヴァイの言葉に、窓際の席でミシンを動かしていたは手を止めて外を見下ろすと、途端にクスクスと小さく笑い始めた。
「腕相撲をしているみたいです。今、団長さんが勝ちましたよ」
「…ガキに混じって何をやってるんだアイツは…」
ソファから歩いてきたリヴァイは、トンと窓枠に手をついて、に覆いかぶさるような格好で窓の外の様子を覗いた。反対側の手では、の肩を抱き寄せる。
すぐ真横にまで近づいてきたリヴァイの横顔に、の胸はドキドキと高鳴った。
チラリと視線を送ればそれに気づいたリヴァイもこちら向いて、ちゅっと軽く触れるだけのキスをされた。
そのまま肩を引かれて、リヴァイにもたれるような格好で頭を撫ぜてもらっていると、はこの上なく幸せな気持ちになるのだった。
リヴァイの逞しい腕の中ではうっとりとしていたが、その穏やかな空気は長くは続かなかった。
「リヴァーイ!君も参加しなよー!」
いつの間にか窓の下にはハンジの姿があり、笑顔を浮かべて手招きをしていた。
「わっ!ハンジさん」
今の姿を見られていたのかと思うとは顔から火が出るほど恥ずかしくなって、ぴゅうっとリヴァイの腕の中から逃げていってしまった。は恥ずかしがり屋なのだ。
ポツンと残されたリヴァイは、(本人に悪気は無いが)邪魔をしたハンジに対して、殺意にも近い怒りを感じたのだった。