第7章 勝てない相手
その騒ぎを聞きつけて同期たちが次々と集まってくる。
「何面白そうな事やってんだ~?」
いたずらっぽい笑みを浮かべて真っ先に声をかけてきたのはコニーだ。
「腕相撲勝負か。面白そうだね」とベルトルト。
「せっかくなら皆でやらないか。日頃の筋力トレーニングの証明にもなるしな」
「いいですね~!ところで、優勝者には何か商品は出ますか?」
ライナーとサシャもそれに続いた。
まるでゲーム感覚である。兵士になったとは言えまだまだ幼さの残る新兵たちは、日常のほんのささいなことであっても遊びに変えてしまうのだ。
「なるほど面白い。優勝賞品は私が用意しよう」
ふいに頭上から声がして皆が一斉に振り返ると、そこには団長のエルヴィンが立っていた。普段は真面目に引き締められている顔に、いたずらを思いついた子どものような笑みが浮かんでいる。
「せっかくなので私も参加させてもらうことにする」
そんな訳で、きっかけはエレンとジャンのささいな喧嘩だったものが、いつの間にか全兵士を巻き込んでの大規模な話にまで発展したのだった。
〇
その頃、リヴァイは衣類修繕室にいた。ここは妻であるの仕事場であり、彼女はここで兵士たちの衣類の修繕やその他衣類製作にまつわる業務をこなしている。
この部屋は本部別館の2階にあり、こじんまりとした小さな部屋だが日当たりも良く居心地が良い。部屋の主であるの親しみやすい人柄も手伝って、ここを訪れる者は多かった。中には衣類修繕の用事が無いのに来る者もいるようで、夫のリヴァイも実はその内の一人なのだった。
とはいえ、いくら夫婦でもあまり入り浸っていては公私混同と思われかねないので、訪れるのは休憩時間だけと決めている。
このようにしてリヴァイなりにルールを決めて自制しているのだが、毎日の昼休憩は必ずこの部屋で過ごしているため、結局は入り浸っているように見えてしまうのだった。