第6章 Everything about me is yours
別に忘れていた訳ではない。
結婚式の事だ。
と結婚したのはもう何年も前の事であり、今まで、幸せすぎるほど穏やかな結婚生活を送ってきた。
だから別に結婚式をしたくない、というポリシーがあった訳ではないのだ。
ただ、プロポーズをしてからすぐに同居を始め、そうこうしている間に幾度もの壁外調査を行ってきた。
超大型巨人による襲撃が2回もあり、ウォール・マリアの陥落という歴史的大事件も起こった。
そんな慌ただしい生活の中で、ついつい…。いや、正直に言おう。やはり忘れていたのかもしれない。
家に帰ればがいる。左手の薬指には、揃いの銀色のリング。
春の日だまりのような幸せな日々の中で、の顔を見つめていられることだけで満足してしまっていたのかもしれない。
「リヴァーイ!!聞いたよっ!!してないんだって?!結婚式っ!!」
ドンッと背中にぶつかってきた人物に、耳元で大音声をあげられてリヴァイは眉をひそめる。
「うるせぇ」
リヴァイの心底迷惑そうな表情を気にすることもなく(もしかしたら、目にも入っていないのかもしれない)、ハンジは言葉を続けた。
「何でさっ!君、一見するとそうは見えないけれど、結構ロマンチストじゃないか!そういうイベント事、意外と好きだと思ってたんだけどな」
「別に…やりたくない訳じゃねぇ。ただ、タイミングが無かっただけだ」
少しバツの悪そうな表情をして、リヴァイが返事をした。