第4章 病気
兵団本部に到着すると、まっすぐに団長室へと向かう。
出勤の早いエルヴィンは既に机に向かって仕事をしており、リヴァイの来室にやや驚いて顔を上げた。
「どうした、こんなに早い時間から」
「申し訳ねぇんだが、今日は休みをもらいたい。が体調を崩したから看病してやらねぇと」
エルヴィンはその蒼い双眼をぱちくりと瞬きさせてリヴァイを見つめた後、にわかに声をあげて笑いはじめた。
「ははははっ、いいとも、今日は特に会議などは入っていない、たまには休め。しかしあのリヴァイがね…」
しまいには涙を浮かべて腹を抱えるエルヴィンに、リヴァイがジロと目を向ける。
「何なんだ」
「いや、は、はぁー、笑い疲れた。ふー」
じとりと、リヴァイの視線はまだエルヴィンを見据えている。
「いや、ほんの数年前までは地下街で手の付けられないゴロツキだったお前が、えらい愛妻家になったものだなと感心していたんだ」
「…もう十年近くも昔の話だろ」
「俺からしたら、ついこの間のような気持ちになるんだよ」
まるで父親のような目をしてエルヴィンが見つめてくるものだから、リヴァイは思わず気恥ずかしくなって視線をそらす。
「ま、何にしても、お大事にな。の休みも俺が受理しておく」
「悪い」
少し笑って、リヴァイは部屋を出た。
その背中へ、エルヴィンが扉から半分だけ身体を出して「ちゃんと看病してやれよー」と声をかけてくる。
(ちっ…今度は母親役かよ)
眉間にシワを寄せて、リヴァイは帰路を急いだ。