第3章 買い物
手をつなぎながらのんびりと歩いているうちに、大勢の人でにぎわう商店街が見えてきた。
「わ~、にぎわってますね!こんな風に買い物に来るのなんて、すごく久しぶりです」
滑らかな白い頬をやや上気させたが、嬉しそうな声をあげる。
「リヴァイさん、早く早く」
小さな手がリヴァイの骨ばった大きな手を握り締め、ぐいぐいと引っ張っていく。
普段の彼女は分別をわきまえた(時にわきまえ過ぎて遠慮がちになってしまうが)、ややおとなしめの性格である。当初はリヴァイも彼女は物静かな人なのかと思っていた。
しかし自分が心を許した相手に対しては、その大人の仮面が少しだけ外され、無邪気な子どものようになるのだ。おまけに少しイタズラっぽいところもある。だが、いたずらといっても決して悪質なものではなく、思わずこそばゆくなってしまうような可愛らしいものばかりだ。
小柄でやや幼い顔立ちの彼女がその様に振る舞う姿は、リヴァイの目には何とも可愛らしく映り、ますます大切にしたいという思いを強くさせる。
「そんなに引っ張んな…店は逃げねえから。転ぶなよ?」
調査兵団という組織の中で見せるリヴァイの粗暴さは、の前ではどうしたことか、なりをひそめてしまう。 口の悪さは生来の物なので内容自体はあまり変わらないが、その口調にはまったくトゲがない。
おそらく兵士達が今のリヴァイを見たら、あまりの気味の悪さに数日間寝込んでしまうかもしれない。それほどに、リヴァイもまたの前では穏やかに過ごす事が出来ていた。
「転びませんよ!子どもじゃないんですか…らっ」
やや憤慨したような表情をしてが振り向いた瞬間、その華奢な身体が傾いた。
「ちっ、言ってるそばから…」
くん、と繋いでいた手を引き、それと同時に折れそうに細い腰を引きよせてやる。
「きちんと前を向いて歩け。怪我なんかしやがったら、しばらく外出禁止だからな」
「ご、ごめんなさい」
えへへ、とバツの悪そうに、リヴァイの腕の中では苦笑いをした。