• テキストサイズ

*スーツを着た狼*【R18】

第3章 先輩の意外な一面





(ハァ…びっくりした……)

結局野宮先輩のお弁当を半分以上頂いてしまった私(流石に全部は無理だったけど)。
まさかあの先輩が料理上手だったなんて、人は見掛けによらないものだ。
…少しだけ先輩に対する印象が変わったかもしれない。


昼食後…
先輩は別件で片付けなくてはいけない事があると言い、私たちは別々に仕事を再開させた。
そして時間は流れ、いつも通り定時に上がる。

(今日は帰ったら仕事の続きでもしようかな…)

明日はまた野宮先輩と意見を出し合う予定だ。
その時間を有意義にする為にも、色々下調べをしておきたい。

そんな事を考えながらいつもの電車に乗る。
相変わらず帰宅ラッシュの車内は混んでいた。
そして3つ目の駅を通過した時…


「っ…」

ふとお尻に違和感を覚えた。
確実に誰かの手が当たっている…

(ち、痴漢…?)

けれどこんなに混雑した車内だ、ただ単に手が当たってしまっているだけかもしれない。
…そう思いたかったが、その手は明らかに不審な動きを見せ始める。
私が抵抗しないのを良い事に、少しずつ大胆になっていくその動き。
体を捩ったりその手を払い退けようにも、これだけ混んだ車内では身動きが取れない。

(やだ…、恐い……)

声を上げた方が良いだろうか…
そう思った瞬間…


「…何してる」

「っ…!」

頭上で聞き覚えのある声がした。
それと同時に、お尻から離れていった手…


「せ…先輩!?」

そこにいたのは野宮先輩だった。
私の背後に立っていた男の人の腕を捻り上げている。


「アンタ…次の駅で降りろよ」

痴漢と思われるその男に凄んだ先輩の顔は、いつも以上に恐いものだった…





「…ご迷惑お掛けしてすみませんでした」

その後…
次の駅で一旦降りた私たちは、駅員さんに痴漢の男を突き出し事情を説明した。
先輩は最後まで付き合ってくれて…


「…大丈夫か?」

「はい、もう大丈夫です。本当にありがとうございました」

「…心配だから家まで送る」

「えっ…そ、そんな…悪いですよ」

「いいから行くぞ」

「っ…」

ぎゅっと手を握られ、彼と一緒に再び電車に乗る。
帰宅ラッシュはもうピークを過ぎていて、車内はそこまで混んでいなかった。



.
/ 56ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp