第7章 打ち明けられた想い
*
「…笹木」
長いキスから彼女を解放し、ぎゅっとその体を抱き締める。
びくりと強張る華奢な体。
俺は笹木を傷付けたい訳じゃない…むしろ大切にしたいんだ。
どうすればこの気持ちが伝わるだろう…
「…好きだ」
「っ…」
もう一度そう伝える。
不器用な俺はありきたりなこんな言葉しか紡げない。
ずっと好きで、ようやくこうして触れる事が出来たというのに我ながら情けないと思う。
思えば、自分から相手に気持ちを伝えたのはこれが初めてだった。
「もっとお前に触れたい……ダメか?」
「……、」
体を少しだけ起こし彼女を見下ろす。
電気も点けずに押し入ってしまったせいで部屋の中は暗かったが、それでも彼女の表情を読む事は出来た。
戸惑いと羞恥の入り交じった表情…それは当然の事かもしれない。
俺がずっと想いを寄せていた事など彼女は知らなかったのだから…
「お前……彼氏は?」
今更だと思いながら一応確認しておく。
意外な質問だったのか、彼女は一瞬目を丸くさせた後「いません…」と小さな声で答えた。
ほっと胸を撫で下ろす。
例えいたとしてもこの気持ちは変えられないし、奪うつもりでいたけれど。
「だったら…俺にチャンスをくれ」
「…え……?」
「俺の事をもっと知ってほしい…。それで…俺がお前の相手としてふさわしいかどうか……考えてくれないか?」
「…先輩……」
優しく諭すようにそう言うと、ようやく彼女の体から力が抜けていくのが分かった。
それでも彼女はまだ戸惑っているようだったが、少し考えた後小さく頷いてくれる。
その様子に思わず笑みが零れそうになった。
自分が思っていたよりずっと、俺自身緊張していたらしい。
「笹木…」
もう一度唇を重ねる。
今度はさっきのように乱暴ではなく優しく…
「ん…、」
下唇を甘噛みした後、舌を滑り込ませた。
笹木の口内は甘くて柔らかい。
舌を擦り合わせるようにして愛撫すると、彼女も怖ず怖ずとその行為に応えてくれる。
俺は彼女の柔らかい髪に指を絡ませ、夢中になってキスを続けた。
「はぁっ…」
唇を離すと、どちらのものとも分からない唾液の糸がぷつりと切れる。
彼女は恥ずかしそうに俺から目を逸らした。
.