第7章 打ち明けられた想い
(私…何やってるんだろ……)
カチャリと家の鍵を開ける。
私のすぐ後ろには野宮先輩がいて…
(これってやっぱり…"お持ち帰り"って事になるのかな……)
――お前と…さっきの続きがしたい
先輩のその言葉の意味がよく解らなかった。
私はその言葉の真意と…
ずっと有耶無耶にしていた、例のキスの件も問いたくて彼を家に連れて来たのだ。
あの時…そしてさっきのエレベーターの中でも…
どうして彼は私にキスなどしてきたのか。
普通何とも思っていない相手にそんな事はしないだろう。
じゃあ先輩は私の事を…
(いやいやいや、そんな訳ない…!自惚れるな私!)
あんなにモテる人が私なんか相手にする訳がない。
きっと何か理由があるのだ…それか、私の知らないところで何か大きな陰謀が渦巻いて…
「中入んねぇの?」
「…!」
後ろから催促されるように声を掛けられ、ハッと我に返る。
自分で連れて来ておいてなんだが、こんな簡単に男の人を部屋の中へ入れて良いものだろうか。
…だがもう遅い。
今更「やっぱり帰って下さい」なんてとても言える雰囲気ではない。
「ど、どうぞ…」
靴を脱ぎ、先輩に来客用のスリッパを差し出す。
けれど彼は靴を脱いだ瞬間、それも履かずに私を力強く抱き締めてきた。
「せ、先輩…!?」
「ハァ…ずっとこうしたかった……」
「……、」
溜め息混じりにそう呟く彼。
前にも似たような事を言われた気がする。
「外でも会社でも…お前に触れたくて仕方がなかった」
「え……あ、あの…」
「…お前の事が好きだ」
「っ…」
一瞬幻聴かと思った。
(先輩が私を…?)
もし先輩の言う事が本当なら、一連の彼の行動は納得がいく。
でもそんな事、すぐには信じられなくて…
「…何とか言えよ」
腕の力を弛めた彼がこちらの顔を覗き込んでくる。
何とかと言われても…
「しょ、正直な話…信じられないというか……」
「…なんで」
「なんでって…、その……先輩とちゃんと話をするようになったのってここ2週間くらいですし…。そもそもすごくモテる先輩が私なんか相手にする訳ないって…普通ならそう思います…」
「…なんだよそれ」
私の答えが気に入らなかったのか、不機嫌になる先輩。
けれど、これが正直な私の今の気持ちだ。
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