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*スーツを着た狼*【R18】

第6章 暗闇の中で





「…動きませんね」

エレベーターが止まってから、すでに15分は経過しただろうか…
あれっきり外部からの連絡は無く、エレベーター自体も動く気配は無い。
加えて周囲が真っ暗な事もあり、だんだん不安になってきた。


「…怖い?」

「それは…まぁ…、」

先輩が一緒だからまだ良かったものの、もし私1人だったらきっとパニックになっていただろう。
正直にそう答えると、すぐ隣に立っていた先輩に手を握られた。


「…俺がいるから平気だ」

「……、」

「それでもまだ怖いっつーなら…」

「っ…」

そっと頬に手を添えられる。
すぐ近くで彼の吐息を感じた瞬間、唇に何か柔らかいものが触れた。


(…え?)

覚えのある感触…私に触れているのは先輩の唇だ。


「せんぱっ…」

「…俺の事だけ考えてれば怖くないだろ」

「……、」

そんな事を言ってもう一度唇を重ねてくる。
何度か啄むように口付けた後、ぬるりと熱い舌を忍ばせてきた。


「んっ…、」

思わず彼の胸元を掴む。
その手を上から重ねるように握ってきた彼は、そのまま私の手を壁に縫い付けた。


「…は…、ん…っ…」

この間よりも長くて深いキス。
頭の芯までとろとろに溶かされ、不思議と嫌だとは思わない。
無意識に自分から舌を伸ばすと、ちゅうっと厭らしい音が出る程強く吸われた。


「ぁっ…、」

「…っと、危ね」

あまりの気持ち良さに立っていられなくなった私を彼が支えてくれる。
その瞬間、パッと明かりが点きエレベーターが動き始めた。


「…直ったみてぇだな」

「……、」

明るくなった途端、急に恥ずかしさが込み上げてくる。

(私ってば自分から…)

キスをしてきたのは飽くまでも先輩の方だったが、途中からは完全に私もその気になってしまっていた。
恋人でもない相手と平気でキスをする女だと、彼に軽蔑されただろうか…



それから無事エレベーターを降りた私たちは、自分たちの安否を警備員に報告してから会社を出た。
電車の中では終始無言だった先輩。
私も恥ずかしくて、彼の顔をまともに見る事が出来なかった。

そして最寄り駅へ着き、「お疲れ様でした」と先輩に告げて電車を降りようとした時…


「…俺も降りる」

「え…?」

「お前と…さっきの続きがしたい」

「っ…」


確かに彼はそう言った…



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