第3章 たとえば、君を知る倖せ【黒子のバスケ/黄瀬涼太】①
「あ、何でしょう?」
「いや、大したことじゃないっス。詞織っちから言って」
「っち?」
コテンと首を傾げる詞織。
さっきからこの子は何なんなのか。
え? どうしてほしいの?
抱きしめていいの?
今抱きしめたなら、それでは終わらないよ?
抱き潰してしまうよ?
……っていうか、ここまで来たら犯罪だ。
もし、カワイイ罪というものがあったなら、速攻で逮捕される。
「……ん? 何スか?」
脳内で叫びまくる自分をどうにか締め出し、努めて冷静な声を出した。
「えっと、昨日と呼び方が違ったので気になって……」
「ゴメン、嫌だったっスか?」
「いえ、そんなことは。可愛いと思います」
笑顔で答える詞織。
カワイイのは君だ。
「それで、黄瀬さんは?」
「あ……」
告白の返事が……。
しかし、澄んだ目で見られると、そんなことは言い出せなくて。
「…………き、今日もマジバでいいっスか?」
* * *
結局、昨日と同じようにマジバーガーで食事をすることになった。
何と切り出そうか。
さっきの告白が、なかったことになっている気がする。
そうだ。
告白を受けるのは日常茶飯事。
だが、自分から告白をしたのは、初めてだった。
正面を見ると、昨日とは違い、メロンソーダを飲む詞織。
……カワイイ。
脳内がその一言に占領されている。