第3章 たとえば、君を知る倖せ【黒子のバスケ/黄瀬涼太】①
「あ、えっと、オレも人の真似すんの得意なんスよ。『模倣(コピー)』って言ってるんスけど、一回見たらだいたい再現できるっス」
「わたしも、一度見たらだいたいできますよ。特に兄の武術には助かっています」
自分と同じことできる子がいたのか。
しかも、こんなに小さいのに。
彼女の模倣したものがどれだけのレベルかまでは分からないが。
それでも、並みの人間にできる技ではないし、充分に評価される特技だ。
そんなことを考えていると、「ふふっ」と彼女が小さく笑った。
「お揃いですね」
「……ふ……っ」
「ふ?」
不意打ちである。
だから、その笑顔は反則だと言っているではないか。
いや、言ってはいないのだが。
詞織の笑顔に胸のトキメキが止まらない。
そのトキメキをどうにか宥めつつ、首を傾げる彼女に尋ねた。
「聞きたいことがいっぱいあるんスけど、いいっスか?」
「はい、どうぞ」
「学校はどこっスか? その制服、どっかで見た気はするんスけど……」
「鴇坂学園の高等部です」
「鴇坂?」
同じ名前の学校に、黄瀬は疑問を持つ。
そんな自分に気づいたのか、詞織は少し困った顔をした。
「父が学園の理事長をしていまして、わたしもその学校に。初等部の頃からずっと通っています」
「そっスか。お嬢さまだったんスね」
鴇坂学園の名前は聞き覚えがある。
お嬢さまやお坊ちゃんが通う、県内でも有名な進学校だ。
この辺りでは、あまり生徒は見かけない為に、見覚えはあるが思い出せなかったのか。
彼女の言葉遣いや仕草の丁寧さにも納得した。