第3章 たとえば、君を知る倖せ【黒子のバスケ/黄瀬涼太】①
「遅くなってスミマセン!」
目の前に立つと、彼女は驚いたように目を丸くした。
吸い込まれそうなほどの深海の瞳。
目の前で見る彼女は、思ったよりも小さくて、黄瀬より頭一つ分以上低かった。
彼女は首を傾げ、ポケットから携帯を取り出した。
「あ、あの……?」
何だ、写真か?
結局、彼女も他の女と同じなのだろうか。
胸が急速に冷え切っていく。
そんな彼の顔の横に、彼女は携帯を向け、見比べるように視線を交互に動かした。
「あ、黄瀬 涼太さんですね」
そう言って、彼女は携帯の画面を黄瀬に見せる。
そこには、顔の緩んだだらしのない自分が写っている。
紗良が写真を撮っていたことを思い出した。
あの写真は、詞織に送るために撮っていたのか。
恥ずかしくて、穴があったら入りたい。
顔を赤くする黄瀬に、彼女はにっこりと笑いかけた。
「お初にお目にかかります。鴇坂 詞織です」
はじめまして。
微笑む彼女に、冷えた胸が急速に熱を取り戻していく。
「……き、黄瀬 涼太っス」
やっと会えた。
赤くなった顔を隠しながら、彼はどうにか言葉を絞り出した。
* * *
駅前で待ち合わせた二人は、ファストフード店であるマジバーガーで夕食をとっていた。
食事に髪が当たらないようにするためか、詞織はシュシュで髪を結んでいる。
髪型が可愛いし、とても似合ってる。
「こんなトコで、申し訳ないっス」
丁寧な所作をする彼女には似合わない店に黄瀬は謝ったが、彼女は首を振った。
「謝る必要はありませんよ。わたしもよく紗良と来ますから」
彼女は天使か何かなのか。
小さい口でハンバーガー食べるところが、黄瀬の理性をぶち壊しにくる。