第3章 たとえば、君を知る倖せ【黒子のバスケ/黄瀬涼太】①
「まぁ、アンタの気持ちも分からなくはないのよ。可愛くてカッコよくて強くて優しくて可愛くて頭も良くて運動もできて可愛い詞織の、昨日の勇姿! 『お近づきになりたい!』、『デートしたい!』って思うのもムリないわ! あたしが男だったら、一目惚れして即結婚ね!」
一目惚れ。自分もそうなのだろうか。
この、どうしようもなく会いたい気持ち。
夕べも、彼女のことが忘れられなくて、全然眠れなかった。
どうにかして、もう一度会いたい。
良い案など浮かばなくて、ようやく紗良に聞くことを思いついたのだ。
「なんとかならないっスか? この通りっス!」
頭を下げて頼む。
一目見た、それだけで終わりにしたくなかった。
あの、凛とした声が、宝石のような深く青い瞳が忘れられない。
「ちょっと、頭なんて下げないでよ! あたしがファンに殺されちゃうじゃない!」
少しオロオロと青い顔をしながら、紗良は周囲を見渡す。
そして、観念したように息を吐き、「仕方ないわね」と言ってくれた。
「とにかく、個人情報だからケータイは教えられない。その代わり、詞織に取り次いであげる」
「ホントっスか!」
「ただし!」
喜ぶ彼に、強い口調で彼女はつけ足した。
「そんなに会いたいって言うなら、誠意を見せて」
「せ、誠意っスか……」
「そう。あたしだって、大事な親友に、下心をもった男を簡単に近づけたくないの。だから……」
ごくりと唾を呑む。
そんな黄瀬に、紗良は真剣な声音で続けた。
「遊び仲間の女、全部切ってきて。もう遊ばないって言って、ケータイのメモリからデータを消すの。それができたら、あの子に会わせてあげる」
そこまでできる?
試すような瞳が、黄瀬を見た。
* * *