第3章 たとえば、君を知る倖せ【黒子のバスケ/黄瀬涼太】①
黄瀬は休み時間を使ってある人物を探した。
制服から学校を特定することも可能だが、彼女の行動や仕草の眩しさにしか意識が向いておらず、どんな制服を着ていたのか覚えていない。
だが、覚えていることもある。
昨日、彼女と一緒にいた少女は、自分と同じ海常高校の女子制服を着ていた。
彼は自分の記憶を頼りに、学校を駆けまわる。
目的の人物は、思ったより早くに見つかった。
どうやら、同じ一年生だったらしい。
――昼休み。
黄瀬は廊下を歩いていたその少女を呼び止めた。
「へ? あれ、黄瀬 涼太じゃん」
思った以上に軽い反応に、黄瀬は面食らってしまう。
顔を真っ赤にすることもなく、思いがけない相手に話しかけられて驚いた程度だ。
そわそわすることもしない少女に、引きつりそうな表情筋をどうにか動かし、笑みを浮かべる。
「あの、昨日、駅前にいたっスよね? 女の子が不良に絡まれたとき。紗良サンでよかったスか?」
確か、彼女はそう呼んでいたはず。
苗字を知らないので、名前で呼んだところは目を瞑って欲しい。
「駅前? あぁ、あの騒ぎ? 確かにいたけど?」
「それを助けた女の子って、知り合いっスよね?」
「詞織のこと?」
彼女の名前が出て、胸がドキッと高鳴る。
間違いない。昨日、彼女と一緒にいたのはこの子だ。
「えっと……」
「その前に」
勝気な瞳を吊り上げ、少女は突然 彼を睨みつけた。