第3章 たとえば、君を知る倖せ【黒子のバスケ/黄瀬涼太】①
何なんだ、コイツらは。
集まるだけ集まって、誰も助けようとしない。
しかし同時に、自分もその内の一人であると気づき、情けなくなった。
助けようとしない周囲の人間に、彼女は何を思っているのだろうか。
それが無性に気になった。
先ほどからのイライラが募ってくる。
「友達って、女の子?」
「だったら、ちょうどいいじゃん。俺らと君らで二人ずつ、一緒に遊ぼうよ」
助けた方がいいのだろうか。
けれど、何となく動くことができない。
不良たちが怖い、なんてことはもちろんない。
ただ、助けに入った彼女から、目を逸らすことができなかったのだ。
そんな風に逡巡していると、不良の一人が彼女の腕を掴んだ。
「あ……」
思わず、そんな声が出ていた。
そのとき。
――ダンッ!
それは一瞬の出来事だった。
流れるような動作で、彼女の腕を掴んだ不良が投げ飛ばされる。
「は、な……へっ?」
……何だ、今のは。
何が起きたのか分からないのは不良たちも同じようで。
投げ飛ばされた不良は痛みに背中を押さえ、呻くことすら忘れて彼女を見た。
「な、何すンだ!」
ようやく事情を掴めたもう一人の不良が彼女に掴みかかる。
けれど、結果は同じ。
彼女は慌てることなく拳を避け、その手首を掴み、相手を地面に押さえつけた。
「痛ぇ、いた、ぃた……っ」
ギブアップと地面を叩く不良を解放し、彼女は先ほどと同様、凛とした声音で言った。
「これ以上続けるなら、友人に警察を呼んでもらいます。それが嫌なら、このまま引いて下さい」
ピンと伸ばした背筋。
真っ直ぐで丁寧な言葉。