第3章 たとえば、君を知る倖せ【黒子のバスケ/黄瀬涼太】①
「ねぇ、リョータ」
「ねぇねぇ、次はいつ遊べる?」
「今度は二人で行きたいなぁ」
「そっスねぇ……」
……面倒くせぇ。
仮面のように着脱可能になった笑みを張りつけ、黄瀬は腕に纏わりつく同じ高校の女子たちに応えた。
あぁ、バスケがしたい。
しかし、今日は体育館に整備が入り、部活はなし。
モデルの仕事も入っていなかった。
せっかくだから、誠凛高校に通う親友(自称)の黒子 テツヤに会いに行こうと思っていたのだが。
高校を出る前からファンに捕まるとは、ツイていない。
それを無下に振り払うこともできず、あちこちに連れ回され、現在、黄瀬は駅前にいた。
「次はいつ撮影があるの?」
「この前の雑誌の記事、すっごいカッコよかった~」
「バスケしてるリョータも好きだけど、仕事してるリョータも最高だよ!」
「ありがとう」
何を見てそう言っているのか。
結局は外見が良いから騒いでいるのだ。
ため息が出そうなのをグッと堪え、彼は仮面が取れないよう意識を逸らす。
「は、離して下さい!」
駅前の喧騒に紛れてそんな言葉を聞き、黄瀬は無意識に足を止めて、声の方へ振り返った。
不良二人の背中ではっきりとはしないが、制服を着たどこかの女子生徒が絡まれている。
「どうしたの、リョータ?」
「あ~ぁ、カワイソ」
「あのまま連れてかれてヤられる感じ? 超ヤバくない?」
道行く人もチラチラと女子高生を気にしていたけど、助けようと動く人間はおらず。
そして、それは黄瀬も同じだった。