第7章 たとえば、君を語る倖せ【クロスオーバー】
*Side アピス*
「はぁ……ひどい目に遭った……」
どうにか自国アデンベールへ戻ったアピスは、自分の部屋のベッドへ飛び込み、天井を仰いだ。
妙な国へ飛ばされて三日ほどで夢王国へ戻って来れたわけだが、彼女と三日会ってないだけで、十年会っていないような気持ちになった。
「アピスさん、詞織です」
透き通る声が部屋への入室を求められ、アピスは急いで立ち上がり、ドアを開けた。
「すみません、お疲れでしたか?」
婚約者の詞織である。
謳魔法の国シンフォニアの第一王女で、婚約と同時にアピスの国であるアデンベールに滞在している。
「そうだね、かなり疲れてる」
三日間不在にしていた分の仕事をこなしたのだ。
疲れないわけがない。
「そうですか。じゃあ、わたしは部屋に戻るので、ゆっくり休んで……」
「なんで?」
アピスの問いに、詞織が大きな黒い瞳を丸くする。
「なんでって……だって、疲れてるなら……」
意味が分からず困惑する彼女を、アピスは強引に引っ張り、自分のベッドへ座らせた。
「疲れてるから、君と一緒にいたいんだけど?」
当然だ。
この疲労感を癒せるのは詞織だけだ。ただ休んだだけで疲れはとれない。