第7章 たとえば、君を語る倖せ【クロスオーバー】
「オレの彼女は! 地上に舞い降りた天使っス!」
「天使とは、随分と陳腐な表現ですね。僕の恋人は、聴いた者を魅了する歌声を持つ――可憐な姿をしたセイレーンです」
「セイレーンって、それモンスターじゃないっスか! ゲームとかに出てくるヤツ!」
「間違っていませんよ。それに、僕の恋人の歌声は一種の中毒性があります。セイレーンは男を誘う歌声を持つ美しい人魚のことですから」
「歌なら僕の婚約者も負けないよ」
"せいれーん"が何なのかは知らないが、自分の婚約者は謳魔法の国の姫だ。
誰かに遅れを取るわけがない。
「俺の部下も得意だ」
「オレの彼女だって歌 得意っス」
それから小一時間ほど、何も生み出さない、しかし彼らにとっては負けられない戦いが続いた……。