第7章 たとえば、君を語る倖せ【クロスオーバー】
「初めまして。私立探偵をしている、安室 透です」
どうぞ、と他の二人にも名刺を渡した。
「探偵さんだったんスか……」
黄瀬の独り言に、褐色の肌の青年――安室 透は人好きのする爽やかな笑みを浮かべて頷く。
「何かあったら、ご連絡を。悪質な嫌がらせからストーカー被害まで、お力になれることでしたら相談に乗りますよ。ここで会ったのも何かの縁ですし、お二人の名前を聞いても?」
自己紹介の流れになり、最初に口を開いたのはメッシュの青年だった。
「……アピスです。少し道に迷ってしまったようなので、とりあえず雨宿りしようかと」
「携帯をお持ちではないんですか? 地図機能もついていますし、行き先が分かれば……」
「けーたい、ですか? いえ、持ち合わせていません」
今どき携帯を持っていない人間がいるのか?
異国の人間のようだし、文化の違いだろうか。
続いて、銀色の髪の少年が大きくため息を吐きながら口を開く。
「日番谷 冬獅郎。連れを待ってるだけだ」
話し方がかなり大人っぽい。
どういう環境で育てば、こんな子どもに育つのか。
少なくとも、自分が十歳の頃は、待ち合わせ相手を『連れ』とは表現はしなかった。
「えっと……安室さんと、アピスさんと、冬獅郎君っスね」
「日番谷だ」
「ひ、日番谷君スね……」
ジロリと睨まれ、黄瀬のデリケートなハートが震える。
少年が発したモノは、子どもの持つ威圧感ではない。
この少年は本当に小学生なのか。
まるで、見た目は子どもなのに、中身は大人のようではないか。
まぁ、そんなことがあるわけはないか、と自分で自分を納得させる。