第7章 たとえば、君を語る倖せ【クロスオーバー】
*Side 黄瀬*
名残惜しい気持ちを抑えて通話を切った黄瀬は、腕で雨を避けながら土砂降りの雨の中を移動し、近くにあった喫茶店の軒下で雨宿りさせてもらうことにする。
すでに先客が三名ほどいることを遠目で確認しつつ近づき、一瞬固まってしまった。
なんだ、この顔面偏差値の高い軒下は……。
金色の髪に褐色の肌の青年と、同じく金色の髪に黒いメッシュを入れた青年。
もう一人は、銀色の髪と翡翠の瞳を持つ、十歳前後の少年である。
すでにモデルとしてそれなりに活躍している黄瀬から見ても、少年も含めて、三人の容姿は整っていた。
己の容姿を自覚しているため気後れなどしないが、若干の居心地の悪さは感じてしまう。
というのも、三人とも妙に苛立っているのが原因だ。
失礼しまーす……と心の中で断りながら、黄瀬は軒下に足を踏み入れる。
それを確認した三人のうち、褐色の肌の青年が深海色の理知的な瞳を丸くした。
「おや、君……モデルの黄瀬 涼太君じゃないですか?」
「うぇ⁉ あ、えっと……そっスけど……」
突然話しかけられたことに変な声を上げると、青年は「やっぱり!」と声を上げる。
それとは対照的に、メッシュの青年と銀髪の少年は怪訝そうに眉を寄せた。
「有名な人なのかい?」
「俺は知らねぇな」
二人の言葉に、褐色の肌の青年は続ける。
「帝光中時代は、『キセキの世代』と呼ばれるバスケメンバーの一人で、当時から人気モデルとしても活躍されています。掲載された雑誌は常に高い売り上げを確保。海常高校に進学してからも、バスケの腕にはさらに磨きがかかり、入部したバスケ部では、一年でありながらすでにエースとして活躍されている実力者ですよ」
「いや、褒め過ぎっスよ!」
そう言いつつも、褒められて悪い気はしない。
説明された二人はというと、まるで『バスケ』という単語すら初めて聞いたような表情で、曖昧に頷いていた。
そこへ、青年は「あ、すみません」と言って懐に手を入れる。