第6章 たとえば、君を守る倖せ【BLEACH/日番谷冬獅郎】
「そういえば、日番谷隊長」
名前を呼ばれ、「何だ」と振り返る。
ガラス玉のような紅黄色の瞳に見つめられ、忙しなく心臓が脈を打った。
「少し、気になったんですけど……わたしは、いつから隊長に惚れられていたんですか?」
コテンッと首を傾げながら、詞織は唐突に大きな爆弾を投下する。
「な……っ」
何でお前が知っているんだ⁉
喉元まで出かかって、思い出す。
昨日、中級大虚と戦っていた最中にした、自分の発言を。
――「俺の惚れた女は、こんなことすら乗り越えられないほど、弱い人間じゃねぇ」
顔が真っ赤にっているのが、自分でも分かった。
何と言い訳しようかと考えるが、良い案など浮かばずに、ただグルグルと意味のない思考が回る。
「わたし、思ったんですけど……」
ビクッと肩が震えた。
何を言うつもりなのか知らないが、次の少女の発言で心臓が止まるような気すらする。
視線を合わせられず、日番谷の翡翠の瞳が彷徨う。
それに気づかないまま、詞織は言葉を紡いだ。
「わたしも、日番谷隊長のこと、好きだと思います」
「…………は?」
意味が分からない。
彼女は今、何を言ったんだ?
そんな表情が顔に出ていたのか、詞織はさらに言葉を重ねた。
「わたし、昨日、日番谷隊長が駆けつけてくれたとき、すごくホッとしました。日番谷隊長が背中を任せてもいいって言ってくれて、自分を誇らしく思いました。わたしを強いって言ってくれて、わたしはその想いを裏切りたくないって思いました。わたしを『惚れた女』だって言ってもらえて、すごく……」
――すごく、嬉しいって思ったんです。
そう、少女は続けた。
はにかんだように、少しだけ俯き加減で。
それでも、詞織は微かに笑っていた。