第6章 たとえば、君を守る倖せ【BLEACH/日番谷冬獅郎】
「教えて下さい、日番谷隊長。日番谷隊長は、わたしのこと、好きですか?」
日番谷の前まで歩き、小さな手で日番谷の手を握る。
ガラス玉のような瞳に無垢な色を宿らせ、詞織は日番谷に詰め寄った。
それから逃れるように後ろへ下がっていた日番谷だったが、小さな石に足を取られる。
「うわッ」
「……っあッ」
打ちつけたのが柔らかな土の上だった為に、大した衝撃ではなかったが、背中は微かに痛みを訴えた。
「……つ」
身体の上の重みは詞織の身体が乗っかっているからだ。
押し倒されるような体勢に気恥ずかしさを覚えたのか。
珍しく慌てた様子で退こうとした詞織の腕を引っ張り、日番谷は少女の小さな身体を抱きしめ、覚悟を決めた。
「何度も言わねぇから、よく聞け」
数度、深呼吸を繰り返し、日番谷は言葉を飾ることもできないまま、短く言葉を紡いだ。
「……――お前が好きだ」
どこまでも不器用で、どこまでも孤独で。
誰よりも負けず嫌いで、誰よりも強くあろうとし、誰よりも弱い……そんな彼女のことが好きだ。
もっと背丈が伸びて、彼女をスッポリと抱きしめられるようになってから言おうと思っていた言葉。
自分が考えているものとは全然違ったけれど。
顔を真っ赤にする日番谷に、詞織は嬉しそうに、今度は無邪気な笑顔を見せた。
【たとえば、君を守る倖せ 了】