第6章 たとえば、君を守る倖せ【BLEACH/日番谷冬獅郎】
「ここには四席が眠ってる……でも、あの人はここにはいない」
あの人、という人物が誰を指しているのか。
日番谷は一拍置いて理解した。
詞織の斬魄刀の本来の持ち主。
日生 詞織の人格に大きく影響を与えた男。
彼が死んだのは、死神になる前だった。
そして、この慰霊碑に眠るのは、護廷十三隊に所属する死神のみ。
だから、その死神はここにはいない。
「四席はいつも言っていました。頑固は強くなれないって。自分の力しか信じられない人間は、もう強くなれないって」
小さな子どもに言い聞かせるようにする四席の姿が、見えたような気がした。
朗らかで大らかで、面倒見の良い性格から、彼女の友人は多い。
だからか、彼女の死を知り、十番隊だけでなく、彼女を慕っていた多くの隊士が涙を流した。
死神は死と隣合わせ。
誰もが明日死ぬかもしれず、誰もがそのことを覚悟していた。
それは、真央霊術院の生徒も同じことだ。
「…………わたしは、戦います。『暁降』と共に……二人の分も。それで、いいんですよね?」
「……あぁ」
何かを言おうとして、頷くだけに留める。
きっと、その言葉は無意味だろう。
あまり気負い過ぎるな。
あまり無理をし過ぎるな。
あまり心配を掛けるな。
そんな、たくさんの言葉を呑み込んだ。
「……仕事に戻るか」
慰霊碑に背を向けて歩き出せば、「はい」と無機質な声音が返事をし、後ろをついて来る。
しかし、不意に立ち止まった。