• テキストサイズ

たとえば、キミを愛する倖せ【短・中編集】

第6章 たとえば、君を守る倖せ【BLEACH/日番谷冬獅郎】



 ――冷たい君の手が私の弱さ そっと抱く


 ――微かな祈りさえ いつの日か砕けても


 ・

 ・

 ・

 瀞霊廷にある、殉職した隊士の眠る慰霊碑。

 鳥型の中級大虚(アジューカス)を倒した翌朝、日番谷がそこを訪れると、すでに先客がいた。

 石碑の前で風に黒髪を遊ばせながら歌っているのは、十番隊第三席の日生 詞織だ。


 いつものように淡々と。


 けれど、今日は旋律が微妙に違った。
 それは本当に微かな違いで、どこか鎮魂歌を思わせる。

 不意に、旋律が途切れた。
 振り返った少女の紅黄色の大きな瞳が、日番谷を捉える。

「日番谷隊長」

「日生、お前も来てたのか」

 ゆっくりとした歩調で、詞織の隣に並んだ。
 正面からは見えないが、石碑の裏には殉職した隊士の名前が刻まれている。

 そして昨日、新たに十番隊第四席の名前が刻まれた。

「昨日はありがとうございました。日番谷隊長が来てくれなかったら、わたしはあの虚(ホロウ)を倒すことも、四席の仇を討つこともできなかったと思います」

「気にするな。タイミングが良かっただけだ」

 四席が庇った隊士が目を覚まし、中級大虚(アジューカス)の能力を教えてくれた。
 それがたまたま、日番谷が四番隊舎を出る直前だった。

 全てはたまたまタイミングが良かっただけ。

 けれど、それらの偶然に詞織が助けられたのもまた事実。
 偶然に意思など介在しないが、もし介在するのならば、彼女を助けたのは間違いなく四席だろう。

 詞織が石碑に触れ、口を開いた。
/ 196ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp