• テキストサイズ

たとえば、キミを愛する倖せ【短・中編集】

第6章 たとえば、君を守る倖せ【BLEACH/日番谷冬獅郎】



「――喰らえ、『暁光』」


 眩い朝陽のような炎が黒い巨鳥を呑み込んだ。

 卍解は始解の五倍から十倍に能力が跳ね上がる。

 それだけでなく、詞織は始解の時点で、すでに中級大虚(アジューカス)を圧倒していた。
 幻影にさえ惑わされなければ、詞織が勝てない理由など存在しない。


「グァアァアア、ガガァァ……、ググ……、ウ……、アアァァァ……ッ‼︎」


 耳障りな断末魔はいつまでも続かず。
 五秒と満たない間に、虚は跡形もなく消えた。

 炎が晴れ、炎の鳥が詞織の元へと戻る。
『暁光』と呼ばれた鳥は、詞織に頬をすり寄せると、大きな炎を上げて一振りの刀へと戻った。

「日生」

「……お見苦しいところをお見せしました」

 そう言うと、感情の読めない紅黄色の瞳が、日番谷の後ろにいる少女に止まる。
 黒い髪に紅黄色の瞳を持つ、詞織と似た面差しの幼い少女。

 その少女の輪郭が、ぼやけ始めた。

「あ……」

 詞織が小さく声を上げる。

 少女を作り出した虚は詞織が討伐した。
 影響力が失われれば、消えるのは道理である。

 輪郭を失い始めた少女の前に、詞織が立つ。

 やがて、彼女は何も言わず、少女の折れそうなほどに細い身体を抱きしめた。

 その腕の中で、少女は初めて表情を変える。
 驚いたように紅黄色の瞳を丸くし、そして嬉しそうに微笑んだ。

 それを最後に、日生 詞織の闇として生み出された少女は、細かな光の粒子となって空へと消えたのだった――。

* * *


/ 196ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp