• テキストサイズ

たとえば、キミを愛する倖せ【短・中編集】

第6章 たとえば、君を守る倖せ【BLEACH/日番谷冬獅郎】


 真摯な声と翡翠の瞳に、彼女は沈黙する。
 そして、震える声音で言葉を紡いだ。

「……日番谷隊長……わたしは、強いですか? 日番谷隊長から見て、わたしは……」

 言葉の続きを待つことなく、日番谷は頷く。

「あぁ、お前は強い。お前になら、俺は安心して背中を任せられる」

 そうでなければ、彼女は十番隊の第三席に名を連ねることはできない。

 詞織がふわりと微笑む。
 この笑顔が、日番谷は好きだった。

 彼女は一瞬だけ、彼の後ろに立つ過去の幻影へ視線を向けると、不意にそれを逸らして立ち上がる。

「……申し訳ありません。少しだけ待って下さい」

 詞織は斬魄刀を握り直し、虚へ臨んだ。

「新タなシニがみか……愚かナリ。何人来よウと同じコト。闇を持たヌにんゲンなどおらぬ。わレのチカラの前に、ニンゲンもシニがみも無力よ!」

「確かめてみればいい。わたしはもう恐れない。日番谷隊長は言った。わたしは強いと。わたしにはそれで充分。過去も未来も、わたしは全て受け止めてみせる!」

「ほザケ!」

 虚が巨大な鳥のような身体を揺すり、クチバシのような口を大きく開いた。
 その口から赤い閃光が放たれる。

 大虚(メノス・グランデ)たちの基本攻撃の一つ。
 虚閃(セロ)と呼ばれる、霊圧を圧縮させた破壊光線だ。

「霜天(そうてん)に坐(ざ)せ、『氷輪丸』!」

 透き通った氷の身体をしならせ、刀身から一匹の龍が虚閃を呑み込んだ。
 相殺された瞬間に、濃い水蒸気が空間を覆う。

 そこに、感情の籠らない少女の声音が響いた。
/ 196ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp