第6章 たとえば、君を守る倖せ【BLEACH/日番谷冬獅郎】
真摯な声と翡翠の瞳に、彼女は沈黙する。
そして、震える声音で言葉を紡いだ。
「……日番谷隊長……わたしは、強いですか? 日番谷隊長から見て、わたしは……」
言葉の続きを待つことなく、日番谷は頷く。
「あぁ、お前は強い。お前になら、俺は安心して背中を任せられる」
そうでなければ、彼女は十番隊の第三席に名を連ねることはできない。
詞織がふわりと微笑む。
この笑顔が、日番谷は好きだった。
彼女は一瞬だけ、彼の後ろに立つ過去の幻影へ視線を向けると、不意にそれを逸らして立ち上がる。
「……申し訳ありません。少しだけ待って下さい」
詞織は斬魄刀を握り直し、虚へ臨んだ。
「新タなシニがみか……愚かナリ。何人来よウと同じコト。闇を持たヌにんゲンなどおらぬ。わレのチカラの前に、ニンゲンもシニがみも無力よ!」
「確かめてみればいい。わたしはもう恐れない。日番谷隊長は言った。わたしは強いと。わたしにはそれで充分。過去も未来も、わたしは全て受け止めてみせる!」
「ほザケ!」
虚が巨大な鳥のような身体を揺すり、クチバシのような口を大きく開いた。
その口から赤い閃光が放たれる。
大虚(メノス・グランデ)たちの基本攻撃の一つ。
虚閃(セロ)と呼ばれる、霊圧を圧縮させた破壊光線だ。
「霜天(そうてん)に坐(ざ)せ、『氷輪丸』!」
透き通った氷の身体をしならせ、刀身から一匹の龍が虚閃を呑み込んだ。
相殺された瞬間に、濃い水蒸気が空間を覆う。
そこに、感情の籠らない少女の声音が響いた。